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#45 「思った通りに身体を動かす」という視点

基本動作、スポーツ、武術、身体トレーニングなど、身体運動における共通したポイントは何かと考えると、「思った通りに身体を動かすことが出来る」ことも、そのひとつだと考えています。

「思った通り」という言葉のニュアンスからは、「随意的」「顕在的」「意識的」といった言葉を連想させやすいですが、「思った通りに身体を動かす」ということは、高度なレベルで自動化が進んでいるからこそ、適宜必要な対象に注意を向けることが出来ると言えます。

いわゆるリハビリの場面においては、高次脳機能障害がなくとも、一生懸命に歩行しているようなケースでは、内的注意が割合として多くを占めることがあります。そのため、外的注意が不十分になることで、障害物や周囲の人に気づかなかったり、話しかけられるとバランスを崩すだとか、立ち止まるといったことになるかも知れません。歩行中に話しかけられて立ち止まる高齢者は、6ヵ月以内に転倒する可能性が高いという、Lundinら(1997)の報告が有名です。

本来、いわゆる健常者では歩行は高度に自動化しています。歩行が高度に自動化しているほど、歩行に分配する注意は少なくて済みますから、他へ分配する余裕があると言えると思います。会話をしながらでも歩けますし、会話をしながら障害物を避けることも出来ます。もちろん他の課題の難易度によりますが、dual task、multi taskを安定して遂行出来る可能性が高くなります。

歩行はあくまで例ですが、スポーツでも同じことが言えると思います。例えば野球のバッティングフォームなど内的注意の占める割合が大きいと、ピッチャーの動きやボールへ注意が向きづらくなるかも知れません。サッカーで自身のドリブル自体に注意が向きすぎていると、相手から簡単にボールを奪われるかも知れませんし、どこにパスをすることが適切かを判断出来ないかも知れません。

そのように考えると、「思った通りに身体を動かす」という能力は、身体運動において重要なポイントだと言えると思います。練習において「量か質か」といった話がありますが、高度に自動化するという観点で考えると、「どちらも大事」という、特に何のインパクトもない話になります。(「質と量」の話は以前に取り上げました。#19 「質か量か?」を考える~ピッチング練習を例に~

「思った通りに身体を動かす」という視点で、例えばレジスタンストレーニングを観てみても、フォームやボリューム以外で工夫することは色々あると、個人的には考えています。テーマ自体が大き過ぎるので、また時々取り上げていきたいと思います。

【参考文献】
Lundin at al:”Stops Walking When Talking”as a predictor of falls in elderly people.Lancet 1997;349:617.

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