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#44 左右差の話③

今まで書いてきたように、左右差と言っても、何の左右差かということ、それが問題となるのなら具体的にどういうことか、もしくは左右差を減らすことでどのようなメリットがあるかということを、考える必要があるかと思います。

例えば、いわゆるリハビリのケースでは明らかな筋力の左右差を確認することがあります。DanielsらのMMTで大腿四頭筋が右が段階5、左が段階3だったとすると、(少なくともこの検査においては)筋力に左右差があるということになります。測定条件という特異性だとか、細かい話は置いといてですけど。

この場合、左を段階4~5にしていくこと自体が目的とはならないにしても、そうなっていくことで(結果的にそうなっていくという側面もあります)より実用性の高い基本動作の獲得には、ひとつポジティブな要素だと言えると思います。

もちろんそのような明らかな左右差を来した原因はケースによって様々ですから、全てのケースにおいて筋力の向上を図れるかと言えば、そうではないですから、あくまで例えばの話として捉えて頂ければ。

一方、いわゆる健常者における筋力の左右差という話になると、DanielsらのMMTでは大腿四頭筋は左右ともに段階5になると思います。というよりも、DanielsらのMMTの段階の定義自体がそうなっていると言った方が適切かも知れません。

これだと明らかに左右差があるかどうかは、はっきりと分かりませんから、色々な筋力測定機器を用いたり、レッグエクステンションのマシンを使用するなど、方法を変える必要があります。そもそも、それらの方法とMMTでは尺度が違うのですが。

いわゆる健常者であれば、日常生活を送る上では何ら問題のない筋力を有しています(そういう定義で話を進めるということです)。実際には大腿四頭筋の筋力の左右差だけを取り上げて、どうこうすることはあまりないと思いますが、日常生活を送る上で何ら問題のない人に対して、大腿四頭筋の筋力の左右差を減らすことが、その人にとって具体的にどういった意味があるのかを考える必要があると思います。

また、例え筋力の左右差を減らすにしても、強い側の筋力を落とすのか、弱い側の筋力を上げるのか、その両方を行うのか、どちらの筋力も上げるけどより弱い方を上げるのか、そういったアプローチの違いも考えられます。また、筋出力に左右差が出る他の原因があれば、そこにアプローチすることもあるかも知れません。

先ほど書いたように、そもそも大腿四頭筋の筋力の左右差だけを取り上げて、どうこうすることがあまりないと思いますから、あくまでも単純化して話を進めているので、少々強引なのはご了承下さい。

無理矢理まとめると、結局のところ「左右差があるから減らす」という考えでは、何らメリットがない取り組みになる可能性もあります。「左右差があるから減らす」というよりも、「左右差が生じている」ということを、情報のひとつとして捉えておく方が活用しやすいように思います。その左右差は、大した問題ではないという判断も当然あり得ると思います。

動きの左右差ということで考えると、例えばバーベルスクワットをしている人を観て、ラックアップする時はいつも右脚からステップしているといったケースがあったとします。「何かしらの左右差があるに違いない」と、アライメントを確認したり、筋力を測定して原因を探ろうとする人もいるかも知れませんが、「左脚からステップしたらどうなるの?」と、実際にやってもらうことによって特徴の違い、もしくはあまり変わらなかったといったことを確認出来るかも知れません。

特徴の違い、例えば左脚からステップすると明らかにバランスを崩しているのであれば、より高重量を扱う際にはその原因となる要素が何かしらの傷害のリスクを高める可能性もあると考えて、より詳しく評価していくといったこともあると思います。

といったように、左右差に限らずですが、「左右差があるから減らす」といった考え方では、メリットもなく労力と時間をただ浪費するだけになるかも知れませんし、あるパフォーマンスを高めるために適応した結果である可能性もあると思います。ということで、結局は個別性を考えてちゃんとしないとダメですね、という大した話ではないというオチです。