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#40 褒めることが大事?

「褒めることが大事だ」というのは、いわゆるリハビリにおいても話に出ることがあります。これは、他者から褒められるという社会的報酬に関するいくつかの研究(Izuma at el.2008;Sunagawa at al.2012)が基になっていることも多いと思います。

報酬は動物(人間を含む)の行動を導く動因です。報酬を大きく分けると、ホメオスタシス性と、非ホメオスタシス性の2つに分けたり、生理的報酬、学習獲得的報酬、内発的報酬の3つに分けることもあります。見方によっては、それらを明確に分けることは出来ないという考え方もあるようです。

臨床で考えると、患者さんの意欲がいわゆるリハビリに影響することは、実感するところだと思います。ですから、患者さんとのコミュニケーションを含めた介入を工夫する必要がありますし、実際に専門職はそうしています。

しかしながら、例えば「褒めることが大事だ」と言って、人生の先輩に対して、「すご~いっ!」と言うことが大事なのかと言えば疑問です。これは関係性の問題でもあるので、それが良い悪いで語られることではないのかも知れませんが、「褒める」の捉え方はそれぞれ違うのかも知れませんね。

基となった論文(Sunagawa at al.2012)を確認すると、「すご~いっ!」と褒めたとは書いてないですね。「Your performance was great.」という言葉を「すご~いっ!」と訳せないことはないかも知れませんが、どういった内容だったのか確認しないと、「褒めれば良い」で終わってしまう人もいるかも知れません。

褒めることと、ねぎらうことは違いますし、外在的フィードバックに含めることは出来るかも知れませんが、イコールではありません。言葉の選択は重要ですから、「褒めれば良い」というのは雑だと思います。「あなたに褒められても嬉しくない」ということもあり得ます。繰り返しになりますが、関係性の問題でもあります。

また、同じパターンで褒めていても、報酬予測誤差がなくなっていくと考えられます。「だからツンデレになる」というのが、良いのか悪いのかはわかりませんけども。繰り返しになりますが、関係性の問題でもあります。

「褒める(褒められる)」のはあくまで多様な報酬のひとつであって、「とりあえず褒める」となってしまうと、逆効果にもなりかねないと思います。状況に応じて言葉を選択すること、その選択肢を増やすことが必要だと感じます。

言葉の選択が適切であったかどうかは、その場で判断し辛いケースもありますが、言葉の持つ重みを自覚することでより適切な判断と選択が出来るようになるかも知れませんし、そうなりたいと思います。

【参考文献】
Izuma K et al:Processing of social and monetary rewards in the human striatum.Neuron 58:284-294,2008

Sunagawa SK et al:Social rewards enhance offline improvements in motor skill.PLoS One 7:e48174,2012