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#27 技術よりも人間性が大事?

「人間性が大事」というセリフは時々見聞きします。本来は「人間性とは何か?」を考える必要があるかも知れませんが、「人間性が高い」といった表現は、ここではポジティブな意味であると勝手に定義して話を進めていきたいと思います。

「技術よりも人間性」という表現もあります。言わんとすることはわかる気もしますが、哲学や心理学などを通じて考える場合は別として、一般的に言う「人間性が高い」という表現自体が普遍性のあるものかという疑問もあります。自分にとって都合の良い人を指して「あの人は人間性が高い」と表現していることもあると思います。ここでは、哲学や心理学の話ではなく、一般的によく用いられている(であろう)「人間性」という言葉を取り上げて、話を進めたいと思います。

「Aさんのことを、みんな人間性が高いと言うけど、話してみたら態度は良くなかった」という感想を持ったBさんがいたとします。Bさんにとっては、Aさんは人間性が高いとは思わないかも知れません。その話を聞いた人は、「あのAさんがそんな対応をするくらいBさんは無礼なのか…」と、Bさんの人間性を疑うかも知れません。

また、別の話では、「Cさんのことを想って、あえて素っ気ない態度をとってしまったけど、それが良かったのか今も分からない…」と悩むDさんがいるとします。Cさんからすれば冷たい態度をとられたので、「Dさんはなんて冷たいんだ。人間性を疑うわ。」と思うかも知れません。

これらは作り話ですけど、似たようなことはあるように思います。「家族や恋人や友人」のように寄り添うと言っても、「家族や恋人や友人」じゃないわけですから、そんな距離感(物理的のみならず)で来られても不快だと感じる人もいるかも知れません。もちろんそのような態度を全て否定するつもりはありませんが、「家族や恋人や友人では出来ない何か」を提供するのが専門職の役割とも言えると思います。

「人間性が大切」ということを否定するつもりはありません。しかし、例えば、「俺の言う通りにしていれば良いのだ」「俺の言う通りにしないから上手くいかないんだ!」といった漫画に出てきそうな傲慢な態度の人は、そんなに多くはないはずです(居ないとは言ってない)。

私の知る狭い世界に限って言えば、「対象者の役に立ちたい」と考えている人は多いと感じています。対象者が喜ぶことが嬉しいと感じる、対象者が困っていたら何とか出来ないものかと試行錯誤する、上手くいかなくて悔しい想いをする、現状に満足せず能力を磨き続けようとする、そういった人達は人間性とやらは決して低くないのではと思います。

以前ある方から、「技能=技術×人柄」だと教えて頂きました。同じ技術を用いても結果が違うのは、用いる人が違うからとも考えられます。人と人が関わる仕事ですから、実際に用いているのは技術というよりも技能だと言えます。つまり人柄が含まれているということです。「人間性=人柄」とは言えないかも知れませんが、技能という視点で考えると、人間性が高いことは技術が0でなければ、技能は高まるとも考えられます。あくまで例え話なので厳密性には欠けますが。

「技術よりも人間性」という言葉を例に考えてみます。実際の臨床では、「技術」と「人間性(≒人柄)」を掛けた「技能」を用いていると言えます。ですから「技術よりも人間性(≒人柄)」というよりも、「技能」にはどちらも含まれているということになります。実際には技術だけを用いているわけではないと考えることが出来ると思います。

例えば理学療法士であれば、実際の介入以外での言葉の選択、声のトーンや速さ、表情、姿勢や立ち振る舞いなどは、理学療法士の専門性とは言えないですが配慮すべきことだと思いますし、意識的にしろ無意識的にしろ、これらも技術と言えると思います。これらをなおざりすると実際の専門技術による介入効果も薄れると考えています。

「対象者の役に立ちたい」と考える専門職であれば、「対象者の役に立つこと」という視点で考え行動すると思います。専門職であるが故に視野が狭くなり、専門性とはさほど関係のない解決策が思いつかない(視野が狭くなる)ことはあり得ると思いますが、「対象者の役に立ちたい」と考え行動する人達にわざわざ「技術よりも人間性」と説く必要があるのかと、少し疑問に思うことがあります。否定しがたいが故に思考停止を起こす、さほど役に立たない言葉だと感じる「場面」があるように感じます。

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